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2024.04.21

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春を彩る五花街のをどり

こんにちは、立志社の今津です。

春爛漫を絵に描いたような満開の桜が、京都を席巻し、ホロホロと散って葉桜となると、いよいよ新緑の季節ですね。
今回は、その前に、桜同様に、京都の春を彩る「五花街(ごかがい)のをどり」について、ご案内をしたいと思います。

五花街のをどりの嚆矢(こうし)を飾るのは、上七軒(かみしちけん)歌舞会が主催する「北野をどり」です。
五花街の中でもその歴史は古く、室町時代に、北野天満宮の社殿再建の際に、余った残材を使用して、
天満宮の東門の前に、七軒の茶屋を立てたことに遡るといいます。

時代は下って、桃山時代の天正15年(1587年)8月10日、
北野の地で、豊臣秀吉が主催した「北野の茶の湯大茶会」が開催されました。

秀吉公の休憩所として利用された七軒茶屋にて、
名物の「御手洗(みたらし)団子」を献じたところ、
たいそう気に入って、この団子を扱う特権と、
山城一円の法会茶屋株の公許を得ることになりました。
これが、いまも続くお茶屋の始まりとなったそうです。
お団子の紋章には、こんな由来もあったんですね。

中世の時代は、寺社仏閣でのお祭りに協力することで、商品を扱うことのできる
「座」の一員になれ、その氏子町にて、商品を扱う営業権を得るという時代でした。
「楽市楽座(らくいちらくざ)」を進めた織田信長は、こうしたしばりを無くして、
以降は、力のある武将が、こうした営業権まで認める時代になったんですね。

私は、京都吉兆に入社して、京都で働き始めました。
京都吉兆は、嵐山本店が、京都市の西側にあたる右京区にある関係からか、
「北野をどり」にも協賛されていて、新入社員としてチケットをいただき、
初めて観劇した時の感動は、今もはっきりと思い出すことができます。

五花街の全てのをどりを拝見すると、宝塚ジェンヌばりの芝居の部と、舞踊の部
を組み合わせたバラエティーある内容は、上七軒歌舞会独特のものかもしれません。



 

今年は、3月20日から4月2日にかけて開催された「北野をどり」

京都再興の願いを受けて、いつも京都を元気にしてくれる「都をどり」。
その始まりは、東京に天皇さんが行かれて、京都から東京に遷都となった京都にて、
京都を再興するべく、第一回京都博覧会が、西本願寺、建仁寺、知恩院にて、開催されました。
「都をどり」は、その際に、附博覧として、芸舞妓の舞を披露したのが始まり。

京都吉兆の支店、「花吉兆」(現「hana吉兆」)に6年勤務しておりました間に、
「花街(かがい)」というもの、芸舞妓さんについて、いろいろ勉強させていただきました。

吉兆は、全ての出演される芸舞妓さんに、「豆折(まめおり)」を差し上げておりましたので、
それぞれの出番とお茶のお当番を把握して、お客様からのご依頼のお品もお届けしていました。

豆折も、順番があるので、「お姐さん」のものが下に来ないようにしないといけません。
いっぱい怒られもしましたが、今となってはいずれもいい思い出です。

第1景「置歌(おきうた)」(写真提供:祇園甲部歌舞会)
第1景「置歌(おきうた)」(写真提供:祇園甲部歌舞会)
第8景「歌舞練場桜揃」(写真提供:祇園甲部歌舞会)
第8景「歌舞練場桜揃」(写真提供:祇園甲部歌舞会)

「都をどりは」という呼び出しの声に、
「ヨーイヤサー」という駆け声と共に、幕が上がり、
左右の花道から、青い揃いの総をどり姿の舞妓が舞台に現れる。
下手では、これも同じく青い総をどり姿の舞妓が、笛や太鼓の鳴り物を奏でる。

一旦幕が上がると、四季折々の衣裳をまとった芸舞妓が、次々と現れて舞の世界へ。
春爛漫の情景から、夏、錦秋の秋、冬、そして再び春の花見と続く舞台は、
一幕仕立ての早変わりで四季を表現されて、見ごたえ十分です。


令和6年の「都をどり」は、150回目の記念公演です。
主催   学校法人八坂女紅場学園 祇園甲部歌舞会
開催期間 4月1日から4月30日まで
開催場所 祇園甲部歌舞練場
開始時間 12:30、14:30、16:30 (お茶席は各1時間前から)
観覧券  6000円(一等)、7000円(茶券付一等)、4000円(二等)、2000円(二等学生観覧券)
お問い合わせ 075-541-3391

(写真は、令和の大改修を経て、玄関ロビーや廊下を一新し、今年に新装となった祇園甲部歌舞練場。
 写真提供:祇園甲部歌舞会)


 

今年は、歌舞練場建替えの為、京都芸術大学の春秋座で開催された「京おどり」(写真提供:宮川町お茶屋組合)
今年は、歌舞練場建替えの為、京都芸術大学の春秋座で開催された「京おどり」(写真提供:宮川町お茶屋組合)
フィナーレを飾る「宮川音頭」(写真提供:宮川町お茶屋組合)
フィナーレを飾る「宮川音頭」(写真提供:宮川町お茶屋組合)

宮川町の歴史は、豊臣秀吉が方広寺に大仏を作り、伏見城への街道筋として、
大和大路を整備したことに始まる。この大和大路には、現在の四条通同様に、
江戸時代には、京都の土産物店が軒を連ねて、たいそう賑わっていたといいます。

当時は、大坂から伏見まで船で来て、そこから陸路で京都を目指すというのが一般的でした。
坂本竜馬が、方広寺近くに住んでいたといわれるのも、こうした交通の要衝であったからです。

加えて、ここから伏見稲荷大社、東福寺、泉涌寺、方広寺、清水寺、八坂神社、祇園、知恩院、
東海道の起点三条まで、「都名所図会」にも紹介され、今も人気の京都の名勝地が並んでいます。

祇園祭の、祭りに先立つ「神輿洗(みこしあらい)」の神事は、四条大橋の南側で開催される為、
鴨川の四条大橋の南側を「宮川」といい、この川筋にできた町が宮川町です。
あまり知られていませんが、歌舞伎の行われる「南座」も、四条通の南側で、
この宮川町にあります。

私は、花吉兆在勤中の一時期、この宮川町に住んでいました。
お茶屋さんの南側にあるそのマンションには、芸妓さんも住んでおり、
京都ゑびす神社の真西にあって、雪が降ると、東山魁夷の「年暮る」の絵が現出して、
町家の屋根に雪が降り積もった情景を目の当たりでき、たいそうお気に入りの場所でした。

「京おどり」は、場面転換が早く、踊りが中心なので、リズミカルに体が反応している間に、
1時間の公演時間は、あっという間に終演を迎えてしまう、という感じです。
今年の演目は、江戸時代に評判をとった「東海道中膝栗毛」から、江戸時代から現在にやってきた
「やじ」と「きた」という夫婦の設定で、京都のいろいろな時代を舞絵巻として上演されます。
圧巻は、フィナーレの「宮川音頭」です。芸舞妓さん一同が、一糸乱れぬ舞で魅了されます。
 

ちどりの紋章がかわいらしい先斗町歌舞会(先斗町歌舞会HPより)
ちどりの紋章がかわいらしい先斗町歌舞会(先斗町歌舞会HPより)
鴨川の対岸からモダンな建物ですぐにわかる「先斗町歌舞練場」(先斗町歌舞会HPより)
鴨川の対岸からモダンな建物ですぐにわかる「先斗町歌舞練場」(先斗町歌舞会HPより)
第185回と五花街で最多の公演数を誇る「鴨川をどり」(先斗町歌舞会HPより)
第185回と五花街で最多の公演数を誇る「鴨川をどり」(先斗町歌舞会HPより)
初々しい舞妓さんの踊りにも人気がある(先斗町歌舞会HPより)
初々しい舞妓さんの踊りにも人気がある(先斗町歌舞会HPより)

春爛漫の桜の季節から、花水木の街路樹が目に鮮やかになると、柳の緑、
青楓と新緑の季節を迎えます。この季節を彩るのが「鴨川をどり」ですね。
紋章のように、ちどりが遊ぶ鴨川の水面のきらめきが、気持ちいい季節です。

公演後に、歴史の由緒を残すたたずまいの、先斗町の路地を歩きながら、
良さそうなお店に入って、気軽に一杯できる楽しみが、先斗町にはありますね。

今年は、NHKの大河ドラマ「光る君へ」を彷彿させる源氏物語から、
第一部、「紫の雲にもゆれば」(美しくも楽しい舞踊劇)
第二部、「うしろみ月」 (踊り絵巻といわれる純舞踊)
という構成です。

主催    先斗町歌舞会
開催期間  5月1日から5月24日まで
開催場所  先斗町歌舞練場
開始時間  12:30、14:30、16:10
観覧券    6000円(特別席)、7000円(お茶券付特別席)、4000円(普通席)、1200円(お茶券)
お問い合わせ 075-221-2025
 

祇園東歌舞会は、明治14年に祇園町一帯がお茶屋街となっていたことを受けて、
四条通の北側で、花見小路の東側を分けて、現在の祇園東の花街が生まれました。

八坂神社の西楼門の石段下にある祇園会館にて、
毎年11月1日から10日間「祇園をどり」が開催されています。
花街としては小規模ながら、アメリカ帰りで流暢な英語で花街を紹介できる舞妓がでたり、
特色のある芸舞妓さんが多いのも魅力の花街です。
祇園祭では、地元ということもあり、八坂神社宮本組(祇園の旦那衆で組織)の有志
も参加する「祝い提灯」などにも、夜遅くまで、町を挙げてご協力をいただいています。
フィナーレの「祇園東小唄」では、祇園界隈の四季を唄い上げて盛り上がります。

開催予定  第65回祇園をどり

主催    祇園東歌舞会
開催期間  11月1日から10日まで
開催場所  祇園会館
開始時間  13:30,16:00
観覧券    6000円(ご鑑賞券)、7000円(お茶席付き特別ご鑑賞券)

「祇園をどり」は、春ではなく、秋に開催されますが、
五花街の紹介として一緒にご案内をいたしました。

「五花街のをどり」のメインは「踊り」。生徒さんでもある芸舞妓さんが、
日々研鑽されていることで知られています。合同で6月に開催される「五花街の夕べ」
のほか、それぞれの花街にて、踊りの発表会も開催されています。

※「五花街の夕べ」
6月29日 18:30~ 瓢亭42000円、木乃婦30000円、竹茂楼30000円(いずれも飲み代別)
6月30日 18:30~   リーガロイヤルホテル京都22000円(フリードリンク)
チケット販売 4月23日10:00~
お申込み受付 おおきに財団 075-561-3901

踊りの発表会は、以下の通り。
上七軒歌舞会では、11月に「寿会」(ことぶきかい)     開催予定11月13日から18日
祇園甲部歌舞会では、10月に「温習会」(おんしゅうかい)開催予定10月1日から6日
宮川町歌舞会では、10月に、「みずゑ会」(みずえかい)  開催予定10月10日から13日
先斗町歌舞会では、10月に、「水明会」(すいめいかい)  開催予定10月19日から22日
祇園では、井上流の会「澪の会」(みをのかい)も定期的に行われています。


上記を見ると、微妙に開催日程がずれていて、好きな人は、全てを鑑賞できるようになっているんですね。
今後、株式会社立志社でも、ご希望に合わせて、こうしたお席のご用意も、手配できるようにする予定です。

 

SNS公式アカウントfacebook祇園東歌舞会、Instagram gion-higashi(祇園東お茶屋組合、祇園東芸妓組合HPより)

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